T-60
(M1941)

使用キット
1/35 「T-60」
MAQUETTE(ロシア)

使用アフターパーツ
・可動履帯
1/35 「T-60/T-70」
Friul Model(イタリア)




 N.A.アストロフが手がけたT-37・T-38・T-40・T-30と続く軽戦車の後続として、T-60は開発された。
 T-37・T-38・T-40は水陸両用戦車として開発されたが、水陸両用は不要としてT-40S・T-30では浮航機能の無い偵察戦車として開発された。しかしながら後者の二車両の構造は、水陸両用戦車から浮航機能を外しただけと言っても過言ではなく、T-60に至って、完全な陸上専用の偵察戦車として設計された。

 T-60は制式採用と生産開始は、まさにドイツのソ連侵攻開始時期と重なっていた。本来で在ればモスクワ第37工場で生産開始される予定であったが、工場の疎開完了までお預けとなってしまう。代わって、アストロフ研究所が疎開したゴーリキ自動車工場(GAZ)にて、1941年7月より先行量産が開始された。
 T-60にとって幸か不幸か、開戦当初に大量の戦車を失ったソ連は効率的に戦車を大量生産すべく、軽戦車はT-60、中戦車はT-34、重戦車はKV-1に絞った生産を命じる。これによりT-60は1942年までの間に、先のGAZや第37工場だけでなく複数の工場で大量生産(合計6045両)される事となった。その一方で、本来は偵察戦車であったT-60が、門外漢の歩兵支援などの用途にも使用され、その貧弱な武装(20mm機関砲)と装甲(車体前面35mm・砲塔前面25mm)は期待に応えられる物では無かった。



 T-60は生産時期や生産工場の違いにより、いくつかの差異が生じている。
 また1942年には、増加装甲とマフラーの延長など仕様が変更された。これに従い、戦線から引き上げた'41年仕様のT-60を、'42年仕様に改修する作業も行われている。T-60の生産自体は'42年で終了した様だが、この改修作業は'43年頃まで続けられた。

 1941年仕様のT-60にも大きく分けて初期型と後期型が存在し、初期型は砲塔と車体のハッチ、防盾基部の形状に違いがある。転輪も鋳造製スポーク型である事が多い。
 作例は'41年仕様の後期型で、1942年5月にハリコフの戦闘に参加した第121戦車旅団の車両を再現した。ただし実際の車両は、車体背面の吸気口に、金網の上から防寒用の鉄板がネジ留めされていた。作例ではそれが再現されていない。


 搭乗員の軍装については、別頁参照の事。



 キットについて

 T-60のキットは、現在の所、ロシアのズベズダとポーランドのアエロプラストが開発した物が存在する。ズベズダ製は写真でしか見た事がないが、ズベズダ黎明期のキットと言われるだけ在り、さすがに前時代的なキットの様だ。となると、残るのはアエロプラストのキットしかない。
 アエロプラストのキットは、OEMなんだか、金型を売却したのか、実は同じ会社だったりするのかは知らないが(RPMの事ね)、同じポーランドのRPMやロシアのマケットのブランドでも販売されている。元は同じなんだから、当然各キットの中身も同じ・・・では無い(涙)。RPMのキットはエッチングを追加した豪華版だが、マケットは違う。マケットは違うのだ。
 アエロプラストのキットは二組のランナーで構成されているが、どういう大人の事情が在ったかは知らないが、マケットのキットには内一組分しか入っていない。砲塔と車体分だけである。フェンダー、足回り、工具箱、履帯はオリジナルのパーツが入っており、更にはアランホビーのSU-76Mの足回りのパーツが同封され、「転輪はここから取ってね。」とある。メーカーの垣根を乗り越えたキットであるが、部品が違いを乗り越えているわけではなく、作り手の愛がそこには必要とされる。時にはリストラされる部品も出てくる。合併事業とは大変である。もしこれからT-60を作りたいと思う方がおられたら、アエロプラスト/RPMのキットをお勧めしておく。
 ・・・実の所、アエロプラストのキットも持っているのだ。それも2個も。それでも尚、マケットのキットを作ってしまった自分が居る。それこそがマケットの魅力である。

 アエロプラストのキットは素朴だが、メリハリのあるモールドで、プロポーションも良好である。素組でサクサク作るならば問題無い。ただ大らかな部分やディフォルメもあるので、細部までこだわろうと思うと、それなりに手を入れてやらねば成らない。マケットのキットならば、なおの事である。
 今回はプラ材、銅板、メッシュ、ステンレスパイプなどを用いて、ディテールアップを施した。履帯もフリウルの物に替えてやった。ただキットの整形色が白なものだから、写真では何処をいじったのかサッパリ分からないだろう。自分でも分からなくなってしまって、またうっかり作ってしまいそう。やれやれ。


写真・文章/赤いお母さん


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