1983年3月
チェコスロヴァキアの演習に参加する戦車兵


 1983年3月にチェコスロヴァキアで行われた演習に参加するソ連戦車兵を再現した。

 参考にした写真は『世界最新鋭戦車 T-72戦車とソ連戦闘車両』(1986年度版『戦車マガジン』別冊)に掲載された下の画像で、T-72砲塔内にHEAT弾頭を運び入れる風景を再現した。



 ソ連軍1973年型冬季戦車服とТШ-3戦車帽の組み合わせの典型例として製作した。

(写真と文章/赤いお母さん)


軍装解説


ТШ-3戦車帽

 

 1964年に導入されたマイク付戦車帽(Танковый шлемофон)3型。


 夏用と、毛皮裏地が付いた冬用とが在るが、この戦車兵は何故か夏用を用いている。


・1972年型冬用戦車服


 1972年4月27日付、ソ連国防省命令第92号によって、夏用と共に導入された冬用戦車服。
 戦車兵用に限らず、各種戦闘車両の搭乗員によって着用されている。

 黒い木綿製の生地製で、暗灰色の綿フランネルの裏地が付いた綿入ライナーとセットで用いる様になっていおり、黒い人工毛皮の襟が付く。
 ジャケット裾に付けられたベルトのせいで、一部式のツナギに見えるが、ジャケットとズボンとに分かれた二部式である。
 襟にボタン脱着式のフードを取り付ける事が出来、この再現した戦車兵は、実際には、このフードを取り付けているが、この作例では再現していない。

 ほぼ同型の襟と裏地が天然毛皮の特殊被服も存在する。

 1981年に、夏用・冬用共に、戦車服の改訂がなされた。
 主な変更点は、色の変更(生地は保護色に、襟の人工毛皮は灰色に)と、肩章が縫付式からエポレット式へ切り替えがなされた事である。


 詳しくは「資料室」内の「戦車兵用特殊服:1972〜」を参照の事。
 

その他

 戦車服の着用規定を知らないが、通常の常勤服や野外服の上に着用する事を想定している様で、少なくとも、この戦車兵はジャケットの襟元から、1969年型徴集兵用常勤・野外服がのぞいている。

 冬用の戦車服を着用しているが、彼を含めて、この演習に参加している兵士達が手袋を着用した姿は、写真では確認出来ない。

 履いているのは、徴集兵用長靴である。


模型解説


 ロシアの老舗模型メーカーであるズベズダ社より発売された、「Russian Tank Crew」。3Dスキャン等のハイテクも駆使したキットで、昨今のズベズダ社の力を遺憾なく発揮した優れた製品と成っています。
 購入して組み立ててみると、ズベズダらしいメリハリのある肉感的なフィギュアで、大変に魅力的。このキットをベースに、1972年型冬用戦車服を作りたいという思いから制作を始めました。

 三体セットのキットから、このフィギュアを選んだのは、再現した軍装の特徴が見えやすいポーズだからです。
 とは言え、そのポーズはハッチから身を乗り出して車載機関銃を構えている・・・というもの。単体では非常に使い難い。
 ・・・何かポーズを余り変えずに、別の状況に変えるアイディアは無いかな・・・と模索していると、古い写真集(『T-72戦車とソ連戦闘車両』)の中に、弾頭をT-72の砲塔に運び込む戦車兵の姿を発見。
 ポーズが再現しやすいのは無論、顔がフィギュアに似ているという偶然!この戦車兵を再現する事に決めました。



・フィギュア工作

 先ずは戦車服をソ連時代の1972年型に先祖帰りさせる必要があります。
 また、写真の戦車兵に合わせて、戦車帽をТШ-4型からТШ-3型に、ブーツを編上靴から長靴へと変更する事にしました。


 製作には各種プラ材、伸ばしランナー、真鍮線、マジックスカルプ(エポキシパテ)を用いています。
 白く(一部灰色に)写っている箇所が各種プラ材を用いた部分、クリーム色に写っている箇所がマジックスカルプを用いた部分。

 下半身はズボンやズボンの整形が大変だろうなぁ・・・とは思っていましたが、意外とジャケットも手を加え必要があり泥沼に・・・。
 弾頭を持たせる為には、手も自作する必要があり、マジックスカルプで大まかな形を作り、後は削りだして、溶きパテで微調整しました。

 まぁ、特別な事はやっておりません。
 技術の無さは、手間暇と根気でカバー。
 
 ヘッド部分のアップ。

 オリジナルの状態(左)と改修後(右)。
 左は再現の元にしたT-72M1「948号車」の搭乗員(『T-72戦車とソ連戦闘車両』P.79)
 右はキットの元になったズベズダのスタッフ(「М-Хобби」No.98 p.17 )

 ・・・いやぁ・・・似ているなぁ・・・。

・125mmHEAT弾頭
 

 弾頭は、各種プラ素材を用いてフルスクラッチ。
 試行錯誤の末に、それっぽい形に成った様な気がしますが、撃ったら砲身につまりそうですな・・・まぁ良いか。


・T72M1

 フィギュアのベースとなるT-72は、タミヤのキットをぶった切り、写真の車両(948号車)に合わせてディテールアップしてやりました。
 これだけの為に、一台キットを潰しました。男らしいでしょ?

 必要な部分を簡単に組み立てた後に、飾り台に合わせて、レザーソーでカット。気を付けたつもりなのに、直線が出なかったり、ゆがんでしまったり、一寸ガッカリ。

 因みに、フィギュアを戦車に取り付ける際には、真鍮線で補強してありますが、戦車と飾り台とは金属用のエポキシ系接着剤で芋付けです。

 タミヤの「T-72M1」のキットは、砲塔の形が違うなど、何かと評判が悪い様です。
 確かに、実車写真を見ながらディテールを付けていくと、在るべき場所に部品が納まらないという事がままあり、砲塔が実物と比べると歪んでいるんだな・・・というのが分かります。本物はもっと、平べったくて潰れた感じなのかな?
 とはいえ、シャープなモールドといい、肉厚でメリハリのあるプロポーションといい、これはこれで良いのではないかな?と思わせてくれます。戦車の持つ力強さというか、重量感が良く表現されていて、格好いいのですよ。

・塗装
 塗装には、常の如く水性アクリルカラー各種(ヴァレホカラー、シタデルカラー等)を用いました。

 特別な事はしていませんが、各素材の違いを表す為に、無線コードにクリアーを上塗りしたり、金具に鉛筆の粉を塗布したりています。人工毛皮の襟部分は毛羽だった感じを出したかったので、塗料に炭酸マグネシュウムを混ぜ込んで塗装。
 泥汚れは、パステルをマッドメディウムで溶いた物を塗りつけました。

 ベースの戦車は、缶スプレーで下塗りした後、フィギュアと同じ様に、水性アクリルカラー各種でペタペタと。

戻る