1969年に制定され、1970年に施行されたソ連軍の大規模な服装規定の改定の中で、将校用の野外軍装もその姿を大きく変えた。 この軍装は、将校（〜大佐）・准士官(1971年制度導入)・長期勤務兵（徴兵期間を過ぎて、数年毎の任期契約を結んでいる兵下士官）向けの夏季野外軍装で、1973年式将校用冬季野外軍装と対になる物である。1969年の改訂と共に規定に組み込まれ、1988年の改訂で規定より外れるが、装備更新の優先度の低い部隊などでは、ソ連崩壊に至っても着用が続けられた。 |
| （写真と文章／赤いお母さん） |
・軍装解説 |
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・1975年型将校用野外制帽 1969年の規定において、将校・長期勤務兵は（1971年からは准士官も）、既存の1958年型将官・将校用野外制帽を着用する事とされた。 因みに、以前の1958年規定の野外軍装では、長期勤務兵は略帽（пилотка）を被る事になっていた。 なお、1958年型野外制帽は、帽体・パイピング・チンストラップ・留ボタン・眉庇と全てが保護色と定めれていたが、1969年型将官用野外制帽は、天井/ジガミ/鉢巻の境にあるパイピングが兵科色に変更された。 しかしながら、ヴィクトル・スヴォーロフ（Viktor Suvorov）によれば、1969年の軍服改訂で新しい制帽が導入されたと証言している。導入された制帽は、「SSの制帽」と直ちにあだ名がつけられた様に、以前の制帽と比べると天井部が広く正面のジガミがそそり立っていて、“美しさが全てに優先する”という国防大臣アンドレイ・グレチコ（Андрей Гречко）元帥の指針に従い、見栄えは大変に良いが実用面では難があり、引っかかるは・・・風に飛ばされるは・・・で、大変に不評だったと回想されている（『ソ連軍の素顔』p.237）。また、その変化は現物資料や写真資料から裏付けられる。 明確に文章資料で裏付けられていない様だが、実際は1969年規定を境に、全ての制帽の天井部が大きくなった様である。 1975年に将官・将校用制帽に変化が訪れる。 それは眉庇の形状変化で、それまでの眉庇（1954年制定の形状と思われる）は左右の端から端までの距離が185mm、中央部の幅が55mmだった。これが両端間が235mmに、中央部の幅が57mmと拡張される。 これによって眉庇が大きく、傾斜が緩いシルエットとなった。 ・1955年型将校用野外帽章 制帽には1955年型の将校用野外制帽が鉢巻正面に打ち込まれた。 帽章はプレスされた金属製で、暗緑色の塗装が施されていた。 |
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・1969年型将校用ウール製野外閉襟キーチェリ（Закрытый китель） 1969年式の将校用野外服で、最も顕著な変更は、この上衣であろう。 それまで、ソ連軍将兵の戦場や野外活動に置ける上衣は、伝統的なプルオーバースタイルの服であった。それが時代にそぐわないという事で、前開きのジャケットタイプに変更された。 将校用キーチェリは内襟に白い襟布を縫い付けて着用した。 襟章と肩章は野外用を縫い付け、襟元はフック式の留め具、前は保護色の制服ボタン五つで閉じられた。左右前身頃の腰の辺りにタレフタ付きのスリットポケットが備えられた。 勲章・メダルの略綬は左胸、資格章は右胸の第二ボタンの高さに佩用された。この作例では「ソ連軍専門家一級」「高等軍学校卒業章」「親衛隊章」を左胸に佩用している。 将校野外用のキーチェリとして、ウール製・木綿(実際には化繊との混紡)製・熱地用木綿製が用意された。 ウール製は袖口が折り返しスタイルで、木綿製・熱地用木綿製は袖口にカフスが付いていた。また熱地用は、開襟スタイルだった。 木綿製・熱地用木綿製キーチェリの形状は兵下士官用と同じだったが、ボタンが金色ではなく保護色だった点に差異がある。 野外襟章： 保護色のラシャ製襟章が縫い付けられ、保護色で塗装された野外用兵科章が打ち込まれた。 野外用将校肩章： 将校用常勤肩章は、保護色に兵科色の線が入った（佐官は２本、尉官は１本）常勤／野外用の土台に、保護色で塗られた鉄製の野外用階級章（佐官は大きな星、尉官は小さな星）を打ち込んで用いられた。 1969年の規定における上級中尉の階級章は、小さな星を肩口から35mmの位置に並べて２つ、そこから35mm先の中央部に１つ打ち込む事に成っていた。 （1988年規定では、肩口からの距離は30mm、２つの星と３つ目の星の間隔は25mmに変更された） 士官用特技章「ソ連軍専門家」： 詳しくはBlogの記事を参照。 高等軍学校卒業章： 詳しくはBlogの記事を参照。 親衛隊章： 親衛部隊勤務中の将兵は、親衛隊章を着用し、階級呼称にも「親衛」が付与された。 |
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・1969年型ウール製常勤／野外用乗馬型ズボン（Брюки в сапоги） 野外服のズボンは、常勤用の裾を長靴に入れるタイプと兼用とされた。 保護色のウール地で、側面に兵科色のパイピングが入れられた。作例では太めだが、実際はもっと細い。 既存の1958年型将校用野外服のズボンと、パイピングの追加以外は同じ形状とされた様だが、実際には別物で、膝上の幅がスリムになった。 将校野外用ズボンも、ウール製／木綿製／熱地用木綿製の三種類が用意された。 木綿製はウール製とシルエットは同じだが、側面のパイピングが無い。兵下士官用と同じ形状だが、膝当布が無い点で異なっている。 熱地用木綿製は、兵下士官用と同じ形状で、短靴着用を想定した形状になっていた。 ・将校用ベルト ・マカロフ拳銃／マカロフ用ホルスター／ランヤード ・将校用マップケース ・将校用クローム革製長靴 パレード・外出服や常勤服にも用いられるクロームなめしの革製長靴であるが、野外活動時でも用いられている。 |
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