21. Deutsche & Internationale Zinnfigurenborse Kulmbach
(第21回 クルムバッハ・ドイツ&国際錫人形フェア)

2007年8月10/11/12日 ドイツ・クルムバッハ



初めに

メイン会場

第二会場

第五回 国際フィギュア&ディオラマコンペティション

プラッセンブルクのリエナクメント

最後に

旅行者へのワンポイントアドバイス



文章&写真
木蘭

写真協力
みにちゅあぱーこ様



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初めに

 2年に一度開催され、今年50周年を迎えるフィギュアの祭典クルムバッハショーをレポートします。

 クルムバッハ(Kulmbach)はドイツ南部の人口27,700人の小さな街ながら、酒造(ビール)メーカー4社が工場を置く事で有名であり、また街を見下ろすプラッセン城(Plassenburg)内にはドイツ最大のコレクションを誇る「錫人形博物館(Zinnfigurenmuseum)」を有する、まさにビールとフィギュアの街です。
 この街で錫人形のファンの為のミーティングが行われるのは自然の流れであり、第二次世界大戦以前より、現在と比べて遙かに小規模ながら、錫人形(当時はフラットフィギュア)の愛好家の集会が開かれていたそうです。
 現在の様な形でのイベントが始まったのは1957年からで、それ以来、2年に一度のフィギュア愛好家のお祭りとして、50年間続いて来ました。
 当初はフラットフィギュア愛好家の為のイベントでしたが、近年ではラウンドフィギュア(通常の立体フィギュア)の比率も増え、中には日本のキャラクター物のフィギュアも見かける様に成っています。その是非はともかくとして、その長い歴史の中に、時代の流れも感じさせます。

 今年は16ヶ国184のメーカー/ディーラーが出店し、各国のクラブによるブース出展や、コンテスト、各種イベントが行われました。
メイン会場本部やプラッセン城の錫人形博物館で売られていたフラットフィギュア。
中世のビール造りをモデル化したセット。
クルムバッハの名物2つを表した素晴らしい土産物。
15ユーロ50セント。



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メイン会場

 メイン会場は、街の中心地であるマルクト広場(Marktplatz)に設けられた特設テント。
 実はこのテント、前の週に行われたビール祭りに使った物を流用しており、それ故にクルムバッハを拠点とするビールメーカー四社のロゴが入っている訳です。フィギュアは2年に一度でも、ビールは毎年なんですね・・・そこは重要です。

 メイン会場はメーカー/ディーラーがブースを出展しており、入場無料で買い物や見学を行えます。
 開場時間は以下の通り。

 初日・2日目 09:00-18:00
 最終日     09:00-12:00
 会場ではフィギュアはもちろん、資料本から工具、塗料、ベース、飾棚に至までのフィギュアに関わるあらゆる物が販売されています。

 ドイツは鉄道模型屋は良く見かけますが、普通の模型屋はそう多い様ではなく、また「ドイツでヴァレホカラーを売っているのを初めて見た!」という証言もあり、こういったイベントでしか直に買い物が出来無い環境というのも在る様です。
(因みにドイツの模型塗料は、レベルのエナメルカラーが主だとか)
 中には安売りをしていたり、絶版品を置いているブースもあり、掘り出し物を求めて、財布と女房に相談しながら愛好家の買い物は続きます。
 因みに最終日は、重い荷物を持ってヨーロッパ各地に帰りたくない出店者がディスカウントをする傾向があるので、ここが勝負の時間!という愛好家も多く、彼らの戦いに終わりは在りません。
 客層は中年以降の男性が多いものの、女性の姿も見受けられます。
 また家族や夫婦で来場する人々も多く、連れてきた奥方や子供、孫達の興味を引きつけるアイテムも確かに存在し、フィギュアというジャンルの幅広さと奥深さを感じさせます。

 もっとも多くの奥方は旦那の監督者に違いありません。
 「金が無いなら無いなりに、金が有るなら有りったけ」注ぎ込むのが愛好家という物ですからね。
 財布の紐と、旦那の首根っこは、きゅぅぅぅぅっと・・・。
 フラットフィギュアの中古品を扱うブース。

 フラットフィギュアなどは、切手やコインなどのコレクションと同じように、中古品がキチンと流通しており、決して消費されるのではなく、貴重な文化遺産として次の世代へと受け継がれて行くのだそうです。
 中には親から子へ、子から孫へと、代々受け継がれていくコレクションもあるとか。
 会場にはトップメーカーもブースを出し、自社製品の展示や販売を行っています。
 この会場は愛好家向けの催し物というだけでなく、メーカーやディーラーに取っては見本市であり、各所で商談をする様子も見受けられます。
 メーカーのブースでは、プロのペインターが仕上げたフィギュアを展示しており、愛好家の目を楽しませてくれます。

 またプロペインターが塗った作品も商品として流通しており、会場には完成品を販売するディーラーブースも多数存在します。
 とはいえ、会場にブースを構えるメーカーの多くは愛好家のクラブやセミプロであり、普段は配布(或いは販売)したカタログを見た愛好家からの電話受注に答える程度で(e-mailやサイトを持っていないメーカーの多い事!)、2年に一度のショーに向けて新作を含めた商品を生産してくるのだそうです。

 因みに写真に写っているのは、日本物のフラットフィギュアを作っている「shogun」というメーカー。



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第二会場

 特設テントと通りを挟んだ市立ホール(Rathaus)が、もう一つの会場に成っています。
 ここの開場時間も、メイン会場と同じ。

 コンテストの会場も、こちらでした。
 こちらでは様々なサークルがブースを構えています。
 また外と中にカフェがあり、食事やお茶を楽しむ事が出来ます。お年を召した来場者が、こちらでゆっくりと時間を過ごしている姿を見かけました。
 塗装のデモストレーション。
 この方は水性アクリル塗料を使っている様です。
 こちらも塗装のデモストレーション。
 この女性が塗っているのは、アルフォンス・ミュシャの絵をフラットフィギュアにした物。少々立体的な塗り絵・・・といえば、感じが伝わるでしょうか。使用しているのは油絵具。

 こういった絵画や、メルヘンチックなテーマを扱ったフラットフィギュアもあり、その用途も額縁に入れて絵画の様に部屋に飾ったり、クリスマスツリーの飾りに用いるなど、(語弊が有るかも知れないのですが)女性的な趣味としての一面もかいま見えます。
 こちらは型抜きしたフィギュアだけでなく、型も一緒に販売しています。
 日本人のモデラーから見ると不思議な感じもしますが、新品中古を問わず、型も売買の対象になっています。型を買って、再生産する事も可能な訳です。
 型と柄杓、ホワイトメタルのインゴットという、入門者向けの生産セットなんていうのも、販売されていました。
 こちらは子供向けのフラットフィギュア塗装教室。



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5.Internationaler Figuren- und Dioramenwettbewerd

(第五回 国際フィギュア&ディオラマコンペティション)

 市立ホールの講堂が会場のコンテスト。
 コンテスト自体は、今年で5回目だそうです。

 カテゴリーは「フラットフィギュア」と「ラウンドフィギュア」に分かれ、その中で「塗装」「無制限」「ディオラマ(4体以上のフィギュア)」と部門分けされます。さらに各部門では「マスター」「中級者」「初心者」「ジュニア」とクラスが分けられています。
 各部門・クラスに金・銀・銅メダルが授与されます。

 エントリーは初日(16:30まで)、2日目(11:30まで)に手続きを行い、会場を締め切っての審査の後、最終日の10:00に発表と授賞式が執り行われました。

 エントリー手続きは、エントリーシートに必要事項を明記し、一作品につき参加費(失念しました。2ユーロくらいだったかな?)を支払う事になります。作品の引換券を渡され、作品のベースにエントリー番号のシールをピッと貼られ、後は指定されたエリアにセルフサービスで飾るという流れです。
 セルフサービスで飾る物ですから、持参した台や布で作品を飾るグループもいて、一寸驚きましたが・・・コンテストで有りですか?それは。
 なおクラス分けは自己申告です。私個人は「中級者」クラスでエントリーしました。受付の親父ってば、エントリーシートを確認した後、作品を観て「うん」と軽くうなずいたのですが、あれは「その通り。お前は中級者じゃ。」という意味だったのでしょうか。


 海外のコンペ自体は初体験で、他のコンペに共通する事かは分かりませんが、もし観客の目を引きたかったらコントラスト強めに塗らないとダメだな・・・という事が分かりました。少なくともクルムバッハの会場は、電球色の薄暗い会場なので、微妙な色彩が飛んでしまい、のっぺりぼんやり見えてしまいます。淡いコントラストでは栄えないのです。荒も飛んでくれはするのですが。
 やはり塗装する環境、鑑賞する環境は、塗装方法を左右するな・・・と感じた経験でした。好き嫌いは別として。



 左は入賞者に授与される賞状とメダル。
 せっかくの副賞ですが、メダルは既に内側から腐食しています・・・。


 
おまけ

 『Kit』2007年6月号のクルムバッハ特集記事に、作品が掲載されました。

 ・・・でも賞をもらったのは、この作品じゃないんだよな・・・。
 しかも名前が間違っているし・・・。



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プラッセンブルクのリエナクメント

 街を見下ろすプラッセン城では、ショーに合わせてリエナクメントイベントを開催しています。
 期間中、時折、城より放たれる大砲の轟音・・・結構、びっくりします。
 市立ホール周辺はバスターミナルに成っており、そこからプラッセン城行きのバスが出ています。
 歩いて上る事も出来ますが、城までの道のりは結構な傾斜で、健脚が求められます。片道と往復の料金があるので、片道は歩きを楽しむのも良いかも知れません。

 若干の入場料を支払って区切られたイベントスペースに入ると、そこではリエナクターによる各時代の砲兵隊の再現や軍装品の展示などが行われ、軽食を楽しめるスペースも用意されています。
(終了一時間前に入場した為に時間が無く、軍装品展示等の取材が出来ませんでした。その代わり、入場料は取られませんでしたが)



 研究者でもあるリエナクターが、自分の著作を販売中。


 期間中、当時の姿でキャンプするリエナクター。
 こちらは奥様方でしょうか。

 日に数度、実際に各大砲を撃つデモストレーションをしてくれます。


 ばこーん!
 ずこーん!


 最後に撃つ臼砲が結構凄まじい音で、眼下の城下町に響き渡ります。日に数度、不意を付いて撃たれるものですから、クルンバッハショーの会場に居ても、一寸びびります。何も知らない人は、雷が落ちたのかと、一寸したパニックになる位ですから。
 Good job! 
 弾と火薬を詰めて・・・いるわけではなく、クリーニングロッドでゴシゴシと火薬のカスを取って、油を塗り込んでいる所。ただでさえ錆びやすいのに、発砲なんぞしたら直ぐに手入れをしないと一発で錆びますからね・・・メンテナンスが大変そうです。



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最後に

 駆け足でレポートをした2年に一度のフィギュアの祭典クルムバッハショー。如何だったでしょうか。ヒストリカルフィギュアのみならず模型を愛する人は、一度足を運ぶ価値は十二分にあると思います。

 また欧州の模型ショーは初体験でしたが、日本にいては伝わってこない欧州模型文化の香りと、フィギュアの古典とはなんぞや!を体感できる三日間でした。
 技術力や市場規模では計れない裾の広さと、懐の深さとでも言いましょうか。その楽しみ方の多様性と奥深さ。ガキの遊びでは無く、大人の趣味なんですね。それが歴史であり、文化であり、即ち教養というものなのでしょう。勉強に成りました。


旅行者へのワンポイントアドバイス

 クルムバッハには鉄道の駅が在り、駅から会場までは徒歩で十五分ほどでしょうか。メイン会場の地下が有料駐車場になっており、車での来場も可能な様です。
 企業城下町だけあり、街の規模の割にはホテルはありますが、ショーの期間は早めに予約を入れないと空室は期待できません。郊外や別の街・村のホテルから通うという手もあり、毎年来場するクラブや常連さん達は、こういった場所に馴染みの宿を持っている様です。

 気を付けなければいけないのがお金です。会場では基本的に現金での取引で(まれにカードが使えるブースも在りますが)、もちろんユーロしか使えません。
 ショーは週末ですので、街の銀行は閉まっており、両替が出来ません。また両替屋の様な物は在りません。特別なサービスが無ければ、ホテルや駅での両替も不可能でしょう。この辺は日本での状況と同じと思われます。
 ATMを利用するという手も在りますが、会場周辺の銀行のATMは日本のカードが使えませんでした。地銀だったからか、週末だったからかは不明です。大手銀行のATMが在れば、日本の銀行と提携しているので、ユーロでのキャッシングや引き出しが可能ですが(サービスは口座のある銀行によって違います)、残念ながら街の中心部には見あたりませんでした。街に無いわけではないのですが、中心部から少し外れた場所にあります。
 「金が無いのは首が無いのと一緒」という様に、手持ちが無ければ欲しいアイテムを前に悔しい思いをする事になるでしょう。日本で買える物で在ればまだしも、そうでない物が殆どですから辛いところです。たっぷりとユーロを持参するか、カードのサービスを調べて行かれる事をお勧めします。

 言葉の問題ですが、ホテルや駅であれば運が悪くなければ英語が通じます。街中や会場では、相手が外国人で在れば英語が大抵は通じます。ドイツ人で在れば、運が良ければ通じます。この辺の事情も日本と同じですね。
 もっとも英語は中学生でオチこぼれ、ドイツ語は「1、2」までしか言えなかった私が過ごせたのですから、金と気合いがあれば何とかなります。



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