1970年代後半~'80年代
トルケスタン軍管区
冬期作業服姿の軍建設部隊員



 
 1970年代後半~'80年代頃。冬期のトルケスタン軍管区にて。自家製蒸留酒(サマゴン:самогон)をお礼の品に、ウズベク人の老人から依頼された排水溝の点検するソ連軍建設部隊員。
 上級軍曹と老人が吸っているのはロシア式吸い口付紙巻き煙草パピローサ(Папироса)。


 軍建設部隊とは国防省隷下の特別兵科部隊で、軍関連の施設を建設するといった土建業務を担う組織であり、1980年のモスクワ五輪関連施設やシェレメチェボ国際空港などをはじめとする民間公共事業にも動員された。
 一般兵科と比べると、純軍事的訓練や政治教育の時間は少なく、また一般兵科の軍装が「パレード/パレード・外出/常勤/野外/作業」と五種類の区分が在ったのに対して、軍建設部隊には「パレード/常勤/作業」の三種類の区分しか無いなど、特殊な組織であった。
 軍務に服している扱いではあったが、その労働は労働法に規制され、労働対価として賃金が支払われるなど、軍付属企業の社員というべき存在だった。
 (写真と解説/赤いお母さん)


軍装解説 

 
 ここで軍建設部隊員の二人は、作業防寒服として1974年型「綿入れチェラグレイカ」「綿入れ乗馬型ズボン」を着用している。
 「綿入れチェラグレイカ」は作業時の特殊防寒服であったが、後に標準的な冬期作業服の一つに数えられる事になった。


 冬期作業軍装として、一般兵科・軍建設部隊の徴集兵(兵役勤務兵)及び士官候補生の兵下士官に、「防寒帽・防寒ジャケット(куртка утеплённая)・作業服・長靴・ベルト・手袋」が規定されていた。

 手袋は通常の手袋(перчатки)と三本指のミトン(рукавица)とがあり、軍建設部隊員には前者の手袋のみでミトンは規定されなかった。
 ベルトは常勤軍装と同じで、一般兵科の兵士は真鍮バックルに革ベルトであったが、軍建設部隊員は特殊で、専用の作業ベルト(後述)が用いられた。ここが大きく違う点である。
 この規定に、1988年規定では「綿入れチェラグレイカ」が追加された。
 
 
 それでは、それぞれの軍品について見てゆこう。


 
   
 軍建設部隊 上級軍曹(Старший сержант


 ・徴集兵用耳被い付防寒帽(шапка-ушанка)
 ・1969年型制帽用帽章

 徴集兵用の人造毛皮を用いた「耳被い付防寒帽」を着用し、正面に「1969年型制帽用帽章」が取り付けられている。

 各軍品について詳しくは、別頁の解説を参照の事。



・1974年型
 綿入れチェラグレイカ(телогрейка ватная)
 綿入れ乗馬型ズボン(шаровары ватные)

 1974年に形状を一新した「綿入れチェラグレイカ」と「綿入れ乗馬型ズボン」を着用している。
 1988年規定までは、チェラグレイカは部隊に配備される特殊被服であったし、同様の綿入れ乗馬型ズボンに至っては冬期作業軍装に加えられてもいないが、ここでは上下共に着用している例を再現している。

 各軍品について詳しくは、Blog記事参照の事。



・肩章

 1974年型チェラグレイカには、保護色で共生地の縫付式肩章が備えられていた。肩章には赤いリボン式の階級章が縫い付けられ、肩章には保護色で塗装された鉄製の兵科章が(襟に兵科章を付けない場合の法則に従い)打ち付けられた。
 チェラグレイカの肩章についての規定は1988年規定に記載があるが、それ以前については同規定及び1973年規定から推測した。

 配置などについて詳しくは、Blog記事参照の事。



 
軍建設部隊兵科章(鉄製)
 
   
・軍建設部隊員用作業ベルト

 軍建設部隊員は「作業」軍装の際に、左の画像にある専用のウェビングベルトを用いた。
 1973年規定で導入された作業服は、上着の上にベルトを着けなかった為、このベルトは防寒服の上に着用するだけとなった。

 バックルと受けの金具、先端金具は無塗装の金属製、遊管と受けの金具を縫い止めた部分の補強は革製と成っている。



・徴集兵用長靴

 胴の部分はキルザ(кирза)と呼ばれる疑似皮革製で、足回り(アッパー)と市革(バックステイ)は革製、靴底はゴム製となっている。
             

 
 
 軍建設部隊員 兵(Рядовой)


・徴集兵用耳被い付防寒帽
・1969年型制帽用帽章

・1974年型
 綿入れチェラグレイカ
 綿入れ乗馬型ズボン

・建設部隊員用作業ベルト
・徴集兵用長靴


 上記、上級軍曹の項を参照。


・肩章

 肩章も同様であるが、上級軍曹が幅広リボンを横に一本付けているのに対し、最下級の兵であるリャダヴォイ (Рядовой)なので、リボンは着用せずに兵科章のみを付けている。


・エンジニア用手袋

 前述した様に軍建設部隊員の冬期作業軍装では手袋を用いる事になっているが、ここではエンジニア用のミトンを用いている姿を再現した。
 
 
     

模型解説

 

 模型的解説については、Blog「別当日誌」の記事を参照して下さい。


 制作記録

1980年代 ソ連軍建設部隊員とマンホール(5) 組立と塗装  

 作品記録

1980年代 ソ連軍建設部隊員とマンホール(7)
 

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