その特異で印象的な形状と迷彩から人気が高く、日本でもレプリカが作られた79年型国境警備軍装を再現した。 ミニアート社のキットを元にスクラッチ。 駐屯地と警備ポストの間を移動している様子を想定している。 この特異な軍装は、俗に「P(パターン)79迷彩服」と「クラッシュキャップ」等と、西側では呼称されてきた。この被服類の正式名称は不明ながら、ここでは便宜的に「1979年型服(M79服と略)」と「眼庇(まびさし)付ベレー帽」と呼びたい。 なお、この軍装は、例に漏れず夏季用と冬季用とが存在するが、ここでは模型化した夏季用についてのみ言及する。 |
(写真と文章/赤いお母さん) |
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・1979年型夏季服と、その軍装について KGBに属する国境警備隊の軍装は、総じて国防省傘下の陸軍に準じている。しかしながら1980年代初頭、国境警備隊特有の軍装が導入された。それが1979年に規格化され、1980年代初頭に制式化された軍装である。 このM79と目庇付ベレー帽は、それまでの「全軍(除く海軍)共通の1969年型兵下士官用常勤/野外服」(以下M69と略)等に代わり、1980年代初頭に国境警備兵に支給された様である。しかしながらM79と眼庇付ベレー帽は、少なくとも90年代には、その姿を消してしまう。国境警備兵の軍装は、再び陸軍兵士と同様で、わずかに緑色の兵科色だけが異なる姿へと戻ってしまった。 眼庇付ベレー帽 M79には数種類の被り物が用いられた。通常の制帽(フラーシュカ)の他、迷彩生地のベレー帽やパナーマ帽、更にはアフガーンカ用の帽子などである。 その中の一つが眼庇付ベレー帽であり、この帽子との組み合わせが本来の想定で在った様だ。しかしながらM79服との組み合わせで最も多く見かけるのは、迷彩ベレー帽である。眼庇付ベレー帽が着用されている姿の多くは、80年代も後半、しかも82年型アフガーンカ(M82と略)と共にである。 よってこの作例の様な姿は、実は一般的では無いのかも知れない。 この帽子は以前より国境警備隊の「クラッシュキャップ」と一般的には呼ばれていた。確かにそういった表現は妥当と思わせる着装外観である。 しかしながら帽子自体の形状は、「眼庇付ベレー帽」という表現が的を射ており、ベレー帽に眼庇と顎紐を取り付けた構造をしている。クラッシュキャップという表現は、帽子の構造的には正しくない。 眼庇付ベレー帽には、ピロートカと同じ略帽用の赤星が取り付けられる様で、そこにこの帽子の性格が透けて見える。 因みに迷彩ベレー帽には、制帽用の花冠付赤星が取り付けられた。 1979年型服 このM79服は迷彩服として有名であるが、無地の物も存在する事を先に述べておく。 M79服は、前世代のM69服と次世代のM82との、過渡期とでも言う様な服である。縫付式の肩章と襟章、ホック付襟の形状、露出型のボタン、膝当はM69的であり、一方で全体の裁断はM82的である。更には様々な特殊被服の要素も感じられる。 ジャケットの構造は作例の通りである。 見えにくいが左右のウエスト部にベルト通しがあり、その下に脇を締めるゴムが縫い込まれている(補図A参照)。その工夫の反面、M82にはあるウエストと裾のサイズ調節用締紐は付いていない。 左右の胸ポケットは、それぞれ二つの小さなポケットに分かれており、拳銃用弾倉入れの様な構造である。 袖のポケットは露出ボタン式とベルクロ式とがある。 露出ボタンは、カーキ色のプラスティックで、形状はM69と同じ。 ズボンはストレート裁断で、裾はM82と同じ形状だが、サイズ調節用締紐が無い。 興味深いのはポケットで、左右の腰部分にフタ付の細長い貼付ポケットだけがある。その他は、一切のポケットが無い。このポケットは、AKの弾倉が入れられる。 その他装備類 その他の装備類は、陸軍と同様の物である。 ・兵下士官用常勤ベルト ・兵下士官用長靴 ・AK74 ・水筒 ・飯盒 国防省傘下の部隊と違い、国境警備隊では「野外(野戦)用軍装」というカテゴライズが無いのか、野外での監視活動でも「常勤用軍装」でいる姿が見受けられるのが興味深い。 水筒に取り付けてあるのは名札で、ニスを塗ったベニヤ等で作った板に階級や名前等を書き込み、糸留めしてある。 水筒はアルミ製で、塗装仕上げの物と無塗装の物とを再現した。 |
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補図A |
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今回はミニアートのキットを元に、スクラッチしました。 AKと飯盒はドラゴン、水筒はICMのキットから流用して改造しています。 この原型師のフィギュアは総じて出来が良いのですが、特に服の下のデッサンが素晴らしいので、改造用素体としても大変重宝します。大幅に服の構造を変えても、シルエットが崩壊しないのです。 ただ若干首が長すぎたり、胸板が薄いのが好みでは無かったので、修正しています。 ・・・本当は、こんなにいじる予定では無かったんですけども・・・。 因みにこちらの作例と同じキットを用いています。 改造は既製品のプラ材や伸ばしランナー、エポキシパテ、ラッカーパテを用いています。補強材とAK用スリングのDリング以外には、一切金属素材を用いていません。 エポキシパテは、タミヤの速硬化タイプと高密度タイプ、マジックスカルプを使用。色々と試して見たのですが、一長一短ですね。 速硬化タイプは柔らかくて扱い易いのですが、硬化後はボソボソと粉っぽくて加工しづらいので難があります。主剤と硬化剤とを混ぜた後、しばらく於かないと食い付いてくれないというのもやっかいです。 マジックスカルプは水で溶ける粘土タイプで、柔らかいし滑らかですが、食い付きが悪いです。弾力性が無いのは好みの分かれる所です。硬化後はクレオスのプラパテの様な小麦粉っぽい仕上がりです。1/35の改造用には向かない様です。 堅めなのが難ですが、やはり高密度タイプが、私は一番使いやすいですね。 因みに、この撮影後、溶きパテで修正と仕上げをしています。 |
塗装はいつもの通り、シタデルカラーとヴァレホカラー。最期にパステルで仕上げをしています。 しかしソ連の二色迷彩は難題で、今回も余り納得がいっていません。 しかもM79に用いられている色は、もう少し全体に色彩が暗く、茶色がかっています。なかなか色を捉える事が出来なかった上に、スケールエフェクトに失敗した気がします。 ベースは石粉粘土に砕いた鉄道模型用の小石を埋めて、乾燥後にフィールドグラスをシーナリーボンドで接着。 いつもは木粉粘土を使っていたのですが、この粘土、塗装すると反るし、乾燥後にひびが入りやすいのです。試しに石粉粘土の「PLUS」を使ってみましたが、なかなか良好です。反りやひび割れも無いですし、質感もいい感じです。ただ当然堅いので、乾燥後の加工は難しいですし、重量もあるのが好みの分かれる所でしょうか。 |